「今週末どこ行くの?流れ星やらない?」
日本の限られた岩資源の中では、5.12後半のクラックはそうない。
去年の春、ローリングストーンでオンサイトを失敗した以上、残された流れ星のトライには慎重になっていた。
誘われたのはいいものの、4月まで冬山に行っていたこともあり、クライミングの調子はいまいち。すこし考えて、結論出ず。とりあえず仲居に電話。
結局、仲居のパートナーがいないことと、自身の単純にトライしてみたい気持ちで行ってみることにした。
前日の夜、八王子のコインパーキングで乗り合わせ。廻り目平に1時頃ついて2時に寝た。
お互いに朝弱いのを良い事に8時起き。朝食はバターロール2個と少な目。
隣のテントにいる家族をみて、いつまでこんな事やってるんだろうなーと思う。
9時半頃コンケーブでアップ。保持力は起きてないけど目は覚めた。
トポのアプローチよりも手前、林道から右手に入った。これは楽だけど知らないと難しい。
天気は曇り時々晴れ。川上村の最高気温は22℃。この時期にしては良さそうだ。
流れ星の取付きに上がる前に、手前の岩峰裏の広場で準備。
周りにはトポ未掲載のボルトNPミックスのルートが多数。ここではフィンガーボードを使ったウォーミングアップ。
本気トライ前のルーティーンを行い、残置フィックスをユマールした。
オンサイト権のある自分が先行。ビレイヤーはブランコを使ってハンギングビレイ。
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出だしのカムを3つ決めてクライムダウン。結構張ったので戻って休む。
ハンギングビレイ用のカムを目の前に、バランスをとりセルフを取らずに我慢。足が疲れていく。滑稽だけど。
「見えないから、正直、オンサイトは難しいと思うよ。」
仲居に言われて、まあそうだよなと思いながらも、当然本気で狙っていく。
一度、もう一つ上にカムを決められないかと攻めるもカムが入らず。
再びビレイ点に戻った。今のカムで突っ込むことを決める。
仕切り直して極細クラックを探っていると足がスリップ、危うく落ちるところだったけど持ちこたえた。三度目になるビレイ点へのクライムダウン。
一度完全にパンプしてしまったので、ビレイ点前でバランスをとり十分に休んだ。
一度パンプしたのが良かったのか、出だしのジャミングはしっかりと決まった。左足をコーナーに張って体をあげる。次は完全に閉じているので周りに目をやり、右側の縦ホールドを捉える。都合よく左手をよせ、態勢を立て直し0.3を決める。ここから驚くほどつるつるなクラックに左手を捻じ込み、ジャミング、足もジャミング、とにかくジャミングを決める。厳しいジャミングのコツは渾身の力で頑張る事。ジャミングで落ちてたまるか。魂を込めて、吠えながら一手一手出していく。ツルツルのクラックに戸惑いながらも、多少でも決まりのいいところで0.4をセット。片手で耐えられる秒数が短く、やむなく一回カムシャフト。そして怒涛のジャム。右手のハンドジャムが決まったところで休めるかと思いきや、足が不安定すぎて大して休めない。2を決めようとするもフレアしすぎて、はじかれる。ギアラックの端にいい加減に戻す。仲居が.4を2セット持っていたことを思い出し、半ば感で右手の裏側に差し込んだ。どうやら決まった。
右手だけのハンドではつらく、激しいパンプが襲ってくる。ハンドで引き付けて無理やり0.2をセットしようとするも一度スリップ。4枚カムのうち2枚が飛び出した状態で残置されたカム。一層激しいパンプに襲われるも仕方がないので再度無理やり引き付けて、セットしなおした。またしてもつるつるのフィンガーの連続、やることは一目瞭然。とにかくジャミングで頑張る。傾斜が強いが吠えながら押し切る。なんとかハンドに到達したが、傾斜の強さとツルツル具合で全く休まらない。とりあえず1番を決める。これは回収時に見たところウォーキングしてはずれそうなセットだった。ハンドでこんなに追い込まれたことは初めてだ。このあたりから息が苦しくなってくる。今度は激しいパンプに屈せず進むために、全身の力を奮い立たせて吠えながら進んだ。
3番を決めて、右手に水平クラックがある。傾斜はここから垂壁程度になるも、普通の保持がまるでできない前腕になっていた。窪みにストッパー赤、これは大きすぎたが直す余裕はないので無視、先へ進む。ロクスノにあった杉野さんの写真がよぎり、一度右へ。
右上にホールドらしきものがあるが届かない。重力が強い。なんとか戻り体制を立て直すと直上から左上に行けそうなことが分かった。危うく落ちるところだった。粗く大きな呼吸を繰り返し、手は極力下に下げる。回復のめどはないけど、ここは足が限界を迎えるまで休む。ここまできたら絶対に逃したくない。
途中.3を決め、ぼろぼろの身体でも落ちないムーブを必死に考えて登る。傾斜が落ちてきた。.75を決めて左上に見えた終了点まで登り上がった。
ヌンチャク2本で終了点を作り、クリップ。酸欠状態だった。そして周りを見渡して叫んだ。
ゴジラ岩や、涸沢岩峰を眺めて、新しいルートできないかなと思った。
自分自身オンサイトに驚いているのを感じながら、ロワー回収した。
一方の仲居は、2か月前の時にできたムーブができずに凹み気味。時間をかけて思い出す。じりじり進むも上部のフィンガーで手繰り落ちをして心が折れていた。
それでも一度地面に戻った後、再度集中しなおして二度目のトライになった。
気合の入った見違える登りで核心を超えた。さっきとは別人だ。右手ハンドジャムポイントまで到達。その後突然のテンション、どうやら腕がこむら返ったらしい。
エイドダウンで降りてきた。
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閉店15分前のナナーズに駆け込み、レタスが売り切れていたことにガッカリしながらも買い出し。しゃぶしゃぶの具材とエビスビールを買って、2人で飲んだ。
メロウで乗りにくいビートや、良い感じのバトルビートでサイファーし、30歳なりの結婚観を語り、いつも通りの感じで寝た。
翌日は9時からキューブにて、5級をなんとか登り、モファット2のムーブを探って降られて撤収。ナナファテで佐々木さん、北平さんとだべって帰った。
流れ星をオンサイトした翌日、このメモを書きながらも何故か右足が痙攣してきた。
よっぽど出し切ったみたいだ。しばらくはゆっくり休もうかな。
週末はデカい壁の偵察予定だけど、とりあえず、余韻に浸ろう。
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